[G検定 合格者インタビューvol.9]ディープラーニング × 継続的な学びと実践
2019年にG検定とE資格をともに取得した鈴木 淳哉(すずき じゅんや)さんは、日本最大のAIコミュニティCDLE(Community of Deep Learning Evangelists)メンバーのひとり。ハッカソンイベント「JDLA Presents CDLE HACKATHON 2020」では、予測性能部門において準優勝、同2021では企業賞を受賞したほか、各種データ分析コンテストでも数々の実績を残しています。そんな鈴木さんに、ブログでも発信されているG検定のユニークな勉強方法から、G検定・E資格保有者のコミュニティの重要性まで伺いました。
G検定合格者プロフィール
G検定2019#1、E資格2019#2合格
鈴木 淳哉さん
CDLEメンバー
ブログでG検定合格体験記を発信
―――まず、G検定を受験されたきっかけを教えてください。
鈴木:私の本業の仕事はAIとは関係のない領域で、システム開発運用やセキュリティ統括の業務を行っています。社内での意思決定の仕方が、主観的で定性的な評価による対応がほとんどで、このような仕事のやり方に限界を感じていました。例えば、「社外のこういう会社でこういうインシデントが起きたから社内でも気をつけましょう」と、「本当に今自社でその対策を優先してやるべきなのか」がきちんと評価されないまま、今まで来てしまっていました。このような意思決定の形を見直して、データ分析や機械学習による客観的で、かつ納得感のある定量的な評価を意思決定に反映していく必要があるのではと強く考え始めたのがきっかけです。
まず何から勉強していけば良いのかがわからなかったのですが、「資格があれば、それに向けて勉強することで基礎は身に付くはずだ」と考え、機械学習に関する資格を検索したところG検定・E資格の存在を知りました。
――実際の学習期間、勉強方法を教えてください。
鈴木:G検定の学習期間は1〜2カ月ほどです。勉強法は、全部で4つのステップを踏んでいきました。ステップ1として、まずは黒本と呼ばれる公式問題集の回答を読破しました。白本と呼ばれる公式テキストから読んでいく方が多いかもしれませんが、実は、テキストと比べて問題集の解説は非常にわかりやすい内容になっています。AIやディープラーニングの予備知識がほとんどなかったので、テキストをいちから読むよりも、試験問題の雰囲気をつかみつつ問題集の回答から読んでいく方がすんなりと理解することができました。
問題集の回答を読み切ったあと、ステップ2として公式テキストを読んでいきます。一度、問題集の回答・解説を読んでいるので、テキスト中の重要そうなポイントにあたりがつき、つまずかずにどんどん読み進めることができました。ステップ3で初めて問題集を自力で解き、ステップ4で模擬テストが閲覧できるサイトで問題を解いていく、というアプローチで学習を進めていきました。この「問題集の回答の解説を読んでからテキストに移る」という方法はおすすめですよ。
――その勉強法や合格体験記をブログやTwitterで発信されているのですよね?
鈴木:そうです。勉強法やG検定の体験記をつづったブログと、「俺人」というタイトルでPythonや機械学習の学習記録ほかコンペの振り返りなどをまとめたメインブログの2つを運営しています。
【参考リンク】
・メインブログ│俺人〜OREGIN〜俺、バカだから人工知能に代わりに頑張ってもらうまでのお話
・G検定合格体験記ブログ│JDLA G検定合格に使った過去問,問題集など対策・体験記
体験記ブログは、G検定対策として1日1語単語の意味をTwitterでつぶやいていて、それらをまとめるために立ち上げたものです。このツイートをまとめた記事は、「G検定受験に向けたおすすめサイト」として、様々なサイトからリンクしていただいているようで、とてもうれしいですね。
――また、鈴木さんはG検定取得のすぐ後にE資格も受験されています。当初から、「G検定に合格したらE資格まで取得する」と決められていたのでしょうか。
鈴木:そうですね。私は「本業で活用していく」ことを目指していたので、「G検定を取ったら、半年以内にE資格も取る」という計画で進めていきました。私の感触では、G検定は「AIを使う側」の人が主に学ぶべき内容になっていると思っています。システムの構築や運用、導入を検討する側としては「E資格まで取得しておかなければ」という思いがありました。
CDLEのコミュニティで学び続ける姿勢が必要
――G検定・E資格の受験後、仕事への影響や変化はありましたか。
鈴木:G検定では、機械学習の応用事例や今後の展望について、ビジネス目線でざっくりとした全体像をつかむことができました。E資格では、数学的な理解から実際のコーディングまで身につけることができたように思います。本業で知識が活きた例としては、セキュリティ製品を導入したり運用ツールを導入したりするときに、外部業者から「この製品は裏でAIの機械学習を使っています」という提案を受けたときに、きちんと評価ができるようになりました。しかし、元々の問題認識としてあった意思決定に応用するというところまでは、まだまだたどり着けてはいないので、今後の課題です。
一方で、ProbSpaceやNishika、Kaggleなどのデータ分析サイトコンテストに参加して入賞できたり、副業としてデータ分析や機械学習のコンテンツを作成する業務が受託できるようになったりと、非常に良い変化も起きています。また、G検定、E資格の合格者が参加できる「JDLA Presents CDLE HACKATHON」にも参画できました。
――「JDLA Presents CDLE HACKATHON」は、2020年と2021年の2年連続でのご参加。2020年は予測性能部門において準優勝、2021年は企業賞を受賞するなど素晴らしい結果も残されています。参加されてみての感想をお聞かせください。
鈴木:1回目の2020年は、個人とチームの両部門で参加しました。チームの方は、コロナ下ということもあり、Twitterなどで参加者を募りオンラインでやりとりをしながらの活動。今の仕事では決してつながることのできない方たちと、SNSを通じて輪を広げられたのはとても良い経験でした。
2回目の2021年は、私たち自身でメンバーを探すのではなく、エントリー希望者から事務局が選定した5人一組のチームが組まれました。こちらも、今まで全く接点の無かった方たちと新しくつながることができ、非常に有意義な活動でした。
――鈴木さんのように、意欲的にハッカソンやコンテストに挑戦されている方もいる一方で、資格取得が目的になってしまっているケースも見られます。合格後も学習を続けていくコツや、CDLEのようなコミュニティを有効活用していくためのマインドセットとしてアドバイスはありますか。
鈴木:「G検定・E資格を持っていると有利になるから」という目的で取得されたり、資格をバッチのようなものと捉えていらっしゃったりする方もいるかもしれません。私は、資格を取ることが目的ではなく、ある目的があって、そのために必要な知識を体系的に学ぼうとしたときの手段のひとつとして資格取得がある、と捉えています。
CDLEのコミュニティはとても良い存在だと感じています。CDLEに積極的に参加されている人は最新技術をどんどん身に付けられている方たちで、私も刺激を受けています。
私は、情報処理安全確保支援士と公認情報システム監査人(CISA)の資格も保有しています。これらの資格は、常に最新の知識と能力を問われるため、更新制で登録維持には継続的に講座を受講する必要があったり、継続教育プログラムの実施と報告が義務付けられたりしています。一方で、G検定やE資格はそういった制度にはなっていません。AIやディープラーニングは日進月歩の領域だからこそ、CDLEのようなコミュニティで学習し続けていく姿勢は必要だと思っています。
意思決定する層は「G検定では足りない」
――AIやディープラーニングを社内で活用していこうとしたときに、周りの理解や、共通の話題として話せる土壌があることも重要なポイントです。鈴木さんが今後、実際に業務改善などを実現していくために、組織として必要な在り方はどのようなものだと思われますか。
鈴木:正直なところ、AIや機械学習のモデルを導入していくために意思決定をする人は、「G検定だと足りないのでは」という気がしています。AIの精度の善し悪しの肌感覚は、意思決定において非常に重要な要素になってきますが、G検定だけではそこまでの肌感覚はなかなかわかってもらえないと思うからです。
例えば、「50%の精度を60%にする」のと「90%の精度を91%にする」のでは、10%と1%と大きな違いがあります。しかし、「もうすでに90%の段階にあるものの精度を1%上げることの大変さ」は、E資格保有者は理解できても、G検定保有者ではまだわからない肌感覚なのではと思います。
そのため、意思決定する人たちにはE資格の肌感覚は持っていただきたいという思いはあります。ただ、コードが組める技術や数学的な裏付けまで必要だというわけではないので、G検定のもう一段階上の状態が理想的なメージです。
――最後に、今後の展望や意気込みを教えてください。
鈴木:引き続き、学んだことを生かして本業でも活用できるように頑張っていきたいと思っています。また、これまで学んだことを生かして、人工知能学会などのアカデミア領域にも手を伸ばして、自分の会社にだけに貢献するというところだけではなく、広く社会に貢献できるような人材になっていければなと思っております。