[G検定 合格者インタビューvol.4]ディープラーニング × DXによる新しい価値創出
2021年度から、全従業員5万人を対象にしたデジタル変革プログラムを始動させたSMBCグループ。「作る人だけでなく使う人も含めた全従業員デジタル教育を」をキーワードに、さまざまなコンテンツを用意している。そんなSMBCグループにおいて、“作る人”の先頭を切って道を示しているのが、データマネジメント部の赤木 佳乃さんだ。
学生の頃からディープラーニングに関心を持っていた赤木さんは、法人営業部在籍時に自発的に学習を始めG検定に合格。DXに全員で挑む社内風土の中、それを牽引する存在にあたる赤木さんに、ディープラーニングやAIを学ぶ意義を聞いた。また今回は、従業員向けプログラムを統括するシステム統括部上席部長代理の松尾 翔さんにも、デジタル人材教育における取り組みの概要を伺った。
G検定合格者プロフィール
G検定2020#2合格
赤木 佳乃さん
三井住友銀行 データマネジメント部
松尾 翔さん
三井住友銀行 システム統括部 上席部長代理
法人営業部で顧客と相対する中で感じた重要性
――G検定を受験されたきっかけについて教えてください。
赤木:昨年春にたまたま書店で「白本」と呼ばれている公式テキストを見てG検定の存在を知り、その年の7月に受験しました。かねてからAIに関する技術や知識を体系的に学びたいと思っていたことと、コロナ禍で中止・延期になってしまう資格試験も多い中で、G検定は自宅で受験できることも決め手になりました。
私は大学と大学院でハードウェアの研究を行っていました。私の研究でディープラーニングは使っていなかったんですが、他の方の研究発表で画像認識の話がよく出ていたんです。「きっと私はすごく狭い中でトレンドは把握しているんじゃないか」という思いがあり、全体としてどれくらいの知識が必要になるのかが気になっていました。また、当時は法人営業部にいたのですが、お客様との会話する上でもディープラーニングへの理解を深める必要があると感じていました。
――実際に勉強をされてみての感想はいかがですか。
赤木:まず白本を読んで知識を把握して、黒本(公式問題集)を解いていきましたが、正直なところ「受かるかわからないな」と状態で受験に望みました(笑)。
「なぜAIが出てきたか」という最初の背景の部分は、知っていた内容が多かったのですが、“ここが弱いな”と思ったのは最新の動向です。試験本番はいろんな会社さんの取り組みに関する内容を問われて、選択方式ながらもわからないところがいくつかありました。そこは今後も勉強していかないといけないなと思っています。また、画像認識については何となくは知っていましたが、自然言語処理など全然知らなかった分野は「いろはのい」から白本を読んで学びました。まだまだ知識は今後も身につけていかないといけないなと思っています。
“全従業員”をキーワードにデジタル変革プログラムを推進
――SMBCグループのDX人材育成施策の状況について教えてください。
松尾:私はデジタルIT人材育成の担当で、「デジタルユニバーシティ」と呼ばれる専門教育チームの組織のヘッドを勤めています。現在は“全従業員”をキーワードに、デジタル変革プログラムを本格化しています。「デジタルユニバーシティ」は2016年から設立しており、一般教養という意味でのリテラシー教育はかねてから行ってきました。しかし、もう一歩進んだものとして、2021年3月からSMBCグループ主要7社の従業員約5万人に向けたプログラムを提供しています。
その全従業員向けプログラムでは、特にマインドセット教育に力を入れています。専門的な部署以外の従業員にも「なぜ自分が学ばなければいけないのか」と、腹落ちしてもらうためです。
――具体的にどのような教育体系になっているのでしょうか。
松尾:流行りの言葉で言うところの「リスキリング」がポイントです。我々が全従業員向けプログラムを作るときのキーワードが「作る人だけじゃなく、使う人も含めた全従業員教育」です。使う人、つまりデジタルツールを使いこなして効率化を図ったり、お客様へご提案したりする人の学びを支えるプログラムになっています。
具体的には、全従業員向けプログラムは5つのプログラムから構成されています。まずは、基礎を学べる自社制作の動画コンテンツです。10分単位の動画で合計5時間ほどあり、スマートフォンで通勤中などいつでも視聴できます。2つ目が、体験型のワークショップです。動画で見た内容をさらに理解するための体験を全3種類用意しています。3つ目は継続学習アプリです。移り変わりが激しいデジタルの分野は「常に学ぶ」姿勢が重要です。こちらも自社開発したアプリで、コラムを読むと自分のアバターが成長して進化していくといったゲーム要素も取り入れています。
4つ目の応用学習は、リスキリングに紐づく仕掛けです。基礎学習で「もっと学びたい」「もっとお客様にこういった情報を提供したい」と感じた従業員のために、ディープラーニングやデータサイエンスなどを学べる専門コンテンツを用意しました。こちらも自社制作で、動画は150種類以上、研修は50種類以上あります。
5つ目は社内SNSです。Microsoft社の「Yammer」を使用し、講師やアプリから一方的に教えてもらうだけではなく、従業員同士で教え合う相互学習ができるコミュニティを作っています。これらの学習プログラムを通じて、基礎学習から徐々にマインドが高まっていき、「使う人から作る人へのリスキリング」へと流していくような仕組みにしています。まさに赤木さんは、「作る人」の先頭を切って道を示してくれている存在で、本当にありがたいです。
ディープラーニングの技術によって目指すのは効率化ではなく、新しい価値創造
――赤木さんは、全従業員向けプログラムに対してどのようなイメージをお持ちですか。また、実際にどのように活用されていますか。
赤木:コンテンツが充実していて、「やりたいと思えば環境が既に用意されている」と感じています。私が所属する部のYammerのコミュニティでは、昼休みにランチを食べながら外部講師の方の技術の話を聞くといった会も開催されていて、タイミングが合ったり興味があったりするものには参加させてもらっています。
松尾:赤木さんは、Yammerでもよく投稿されていて、データサイエンスの分野での活用事例を示してくれていますよね。SMBCグループは法人営業など営業職が非常に多いんですが、「お客様にとって何が嬉しいのか」という観点で、本部の社員も活用事例を紹介しています。このようにしてリスキリングにつながっていけばと期待しています。
――赤木さんもG検定を受験されたのは法人営業部にいらっしゃったときでしたよね。
赤木:今年4月からデータマネジメント部に所属していますが、その前が法人営業部でした。昔ながらのお取引のあるお客さんも多いですが、ベンチャー企業のお客様ともお話しすることがあり、その際には当たり前のように「ディープラーニングが……」「データ分析が……」という話が出てきます。法人営業の担当者もリテラシーが必要で、「どういった技術があって、当社はその中でもどこが強みなのか」を知っていなければならないと課題意識を持っている社員も多かったと感じています。
松尾:実際に、データサイエンスに関する勉強会を行うと、法人営業担当者の参加者が非常に多いです。さらに、全社員に募集形式で配っている「Aidemy」のライセンスも、9割が法人営業の担当者。単に「知識として言葉を覚えたい」というフェーズを超えて、「自ら学び、お客様に提案して一緒にビジネスを作っていきたい」と考えている人が増えていると実感しています。
ディープラーニングなどの技術を通して我々が目指していることは、「効率化」ではありません。効率化ももちろん大事ですが、AIやディープラーニングを活用してどうビジネスを大きくしていくか、ビジネス変革をどう起こしていくのか、いかに新しい価値を生み出していくか、が目標にあります。赤木さんもYammerでは、決して「データを使って効率化しましょう」という内容だけでなく、広い目線でビジネス全体のことを考えた提案をしてくれているので、とてもありがたいですね。
赤木:ただの技術紹介で終わるのではなくて、「それを使ってどんなことができるんだろう」というところを社内の方々に伝えられるように、文章の書き方にも気をつけています。
身につけた知識を武器に守りを固め、攻めの人材へ
――G検定を受けて、業務への影響はありましたか。
赤木:真っ先に感じたのは、合格したということで自分の知識に何となく自信が持てました。現在の私の業務はデータ分析ではなく、その土台となるデータウェアハウスの整備や、下支えとなるデータガバナンスの在り方を検討しています。そのため、G検定の学習を直接的に活かす機会は少ないですが、「データは利用用途によって求められる管理の水準は違うな」とはすごく思っていて、G検定で学んだ技術でもって理解できることもあります。
――G検定受験前と受験後のご自身の意識の変化はありましたか。
赤木:「自分の知識はまだまだ足りないな」と、受験してからさらに思うようになりました。今後も継続して勉強していかなきゃいけないし、もっと言えば今後も継続して受験が求められるのではないのかなと思っています。
また、G検定では広く一般的な知識が問われているかと思います。今後、例えば部内にいる分析の部隊の人たちと話したりするにあたっては、さらに踏み込んだ実装の議論ができるようにならなければと感じたので、E資格の受験も考えています。
――今後は、どういった人材として活躍していきたいか意気込みをお聞かせください。
赤木:今は技術寄りの“作る”側の部隊にいますが、「技術を使ってどういう企画をしていくか」という、“使う”側に行きたいなと常々思っています。ベースとなる知識はG検定で学んだものもありますし、今後も学んでいこうと思っていますが、今度は技術に踏み込んで、「自分で実装するとこういうものができるんだ」という像をつかみたいです。その後、ゆくゆくは企画をしていきたいなと思っています。
――今後もさらに進めていく人材育成プログラムについて、展望を教えてください。
松尾:我々は、経営ビジョンで一貫して「お客様のDXも一緒に推進していく」ことを掲げています。「お客さま目線」は外すことなく、人材育成の軸にしたいと思っています。「自社のサービスでもっと良いものを作っていくぞ」という意識ももちろん大事ですが、お客様のご支援を顧客接点でやっていくことがさらに重要です。
例えば、法人営業担当者が「お客様は今どんな悩みを抱えているのか」「ビジネスをもっと大きくしたり新しいサービスを生み出したりするには、どういう座組を組んでどんな人を連れて来ないといけないのか」と考えるときに、社内プログラムやG検定で学んだ知識や自信を引っ下げて、お客様と自信を持って新しいアイデアも提案していく。こういったことが、全国の法人営業の顧客接点で生まれるようにしていきたいと思っています。
今、その芽が徐々に出つつあります。湘南法人営業部では、部内の約20人が2週間に1回集まり、あるお客様の新しいデジタルビジネスのアイデアを考えるワークショップを行っています。例えば、ゴルフ練習場(打ちっぱなし)を運営するお客様のビジネスアイデアでは、「打った瞬間落下地点が自動的に計測できる画像認識サービスを導入すれば、さらに集客ができる」といった内容です。そういったアイデアを考えていると、絶対にディープラーニングの知識が必要になってくる。資格や技術の先に、それを使ってどういう未来を描くのか、どのようにビジネスを拡大していくのか、どのように良いサービス・商品を産み社会貢献していくのか。こういったところを従業員、お客様と共に描いていけるような会社になりたいと思っています。