1年間の育休期間にリスキリング エンジニアとしての技術力を高めながら次のキャリアづくりへ

[G検定 合格者インタビューvol.21]

Web制作やリブランディングなど、デザイン領域で幅広い事業を展開するニューロマジック。同社でフロントエンドエンジニアとして活躍している稲垣 弥生(いながき やよい)さんは、2人目の子どもの育休期間を活用して「マナビDX Quest」へ参加し、G検定を取得。積極的にリスキリングを行っている。エンジニアとしての技術力を高めつつも、新たな方向へとキャリアの軸を定めたという稲垣さん。リスキリングによってどのようにキャリア設計や人生設計の可能性を広げていったのだろうか。

【ポイント】
・家計を支える立場でありつつも1年間の育休を取得。自分のキャリアを見直す契機に
・マナビDX Questへの参加のほか、G検定やデータサイエンティスト検定にも合格
・エンジニアとしての幅を広げながら、長期的には課題解決を牽引する人材を目指す

G検定合格者プロフィール

G検定2022#3合格

稲垣 弥生さん

株式会社ニューロマジック フロントエンドエンジニア

育休を利用してマナビDX Questに参加

――まず、自己紹介をお願いします。

稲垣:現在の会社には2017年に入社以降、フロントエンドエンジニアとして企業サイトやSaaSプロダクトなどを制作しています。大学は文理融合型の情報学部で完全な理系人間ではなかったのですが、Webコンテンツの企画や運用などを経験後、現在の会社にエンジニアとして入社しました。

私は2022年3月から今年3月までの1年間、2人目の子どもの育休をとっています。育休から復帰後はサービスデザインを提供する部署へ異動することを自ら希望しました。これまではフロントエンドの仕事に限定していましたが、将来的には課題の発見から解決まで推進する仕事をしたいと考えています。

――異動やキャリアの幅を広げたいと思われたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

稲垣:我が家は夫が専業主夫で、私が働きに出ているという家庭です。1年間の育休期間を使い、デジタル推進人材育成プログラムの「マナビDX Quest」に参加したりG検定を取得したりと、リスキリングをしたことをきっかけにキャリアについて考えるようになりました。

マナビDX Questは2022年9月~2023年2月中旬までの期間に実施されたものです。企業データに基づいたケーススタディ教育プログラムや、企業と協働しながらデジタル技術を活用した現場研修プログラムを無料で受講できました。

最初は「機械学習は私には縁がないかな」と迷っていたんです。ただ、AIについてのニュースを頻繁に目にしたり、じわじわと生活の中にも入ってきたりしていて、避けられない話題になりつつあることは実感していました。AIやノーコードツールを使ってサイトを簡単に作れる技術も発達してきており「このままフロントエンドエンジニアだけでいいのだろうか」「何か新しいことをしなければ」と漠然と思っていました。そんな時に、タイミング良くマナビDX Questの参加募集を見つけて応募してみました。

――マナビDX Questのような形で、リスキリングを始めようと思った決め手はありますか? 

稲垣:育休に入る前からキャリアを広げたいと思ってはいたものの、具体的なやり方やジャンルは決めていませんでした。最初は有料のスクールをいろいろと探していたのですが、Webのバックエンド開発を学べるコースや機械学習のコースが含まれているところが多く、そこで機械学習について意識が向きました。

また、システム系の雑誌を読んでいるとあちこちで「リスキリングをしよう」と言われている。こんなに「リスキリング、リスキリング」と言っているなら、政府も何かしらのサポートをしているはずだと探してみたところ、マナビDX Questを発見。しかも無料で、見つけたときは「これだ!」という感じでした(笑)。

リスキリングの機会を活かして、会社以外のコミュニティを持ちたいという思いもありました。マナビDX Questの募集人数は1800人で、参加者同士で学び合いながら課題を解決していける。これまで縁がなかったような方とも交流してつながることができそうなことも決め手になりました。

「長期間休むのは悪」という価値観から一歩踏み出して

――現在2回目の育休中とのことですが、お一人目のお子さんの育休期間はどのような感じだったのでしょうか?

稲垣: 1人目のときは会社に早く戻ることを優先していました。産後3~4カ月後には復帰して、数時間の慣らし勤務から始めてその後フルタイムに。ただ、会社からはそこまでのスピード復帰はあまり求められていなかったようで、「(仕事を)やりたいならやってもいいけど、もっとゆるくてもいいよ」という反応でした。そこで、2人目の育休は思い切って1年間休んで、将来のビジョンを考えたり自分のことを探究したりする1年にしようと思いました。

――1回目の育休での経験を経て、2回目の育休では自分を見つめ直す作業をされているということですね。とはいえ、家計を支えている稲垣さんが1年間の育休を取るのは大きな決断ではなかったですか?

稲垣:夫が専業主夫で妻が働いて家計を支えているケースは少ないと思いますし、そこで妻が1年間の育休を取るというケースもなかなかないとは思います。私が1年間育休を取りながら学ぶことができているのは、夫が家事や育児を楽しそうに担ってくれていて、かつリスキリングへの後押しもあったおかげです。夫に「現在の仕事とは全く違う分野だから、リスキリングしても全くお金にならないかも」と相談すると、「これからの仕事に直接結びつかなくても、なんでも限定せずにやってみなよ」と背中を押してくれました。本来、育休中は育児のための期間ですし、実際に私も夫と2人で子育てをしていますが、ほとんど余裕がありません。まだまだ女性が家事や子育てをするのが当たり前な世の中ですし、共働き家庭で女性が育休を取ったとしても、1人で子育てをしなければならない環境ではリスキリングなんてやっていられないと思います。

男性は仕事を優先して育休を取らなかったり、取得しても1カ月ほどだったりすることが多いのではないでしょうか。私自身も以前は「休むことは悪」だと思っていましたし、家計を支えている立場で長期間休むのはなかなか不安もありました。でも「働けるなら働くべき」「長期間休むのは悪」という自分の中にある価値観や常識から一歩踏み出して、日々の仕事の重圧から開放されて無風な状態になったときに何を思うのかを感じてみたいと思いました。そのような体験は、キャリアを考えるうえでも、長い人生を振り返ったときにも貴重な機会になると思いますし、のちのち「良かったな」と思えるのではないかなと思っています。

決して「男性も女性も、育休中に勉強しなければいけない」ということではなく、夫婦で仕事や人生について話し合う機会を作ったり、リスキリングをしたりすることで、新しい扉が開くかもしれない、ということを伝えたいですね。

G検定ののちデータサイエンティスト検定も取得

――マナビDX Questに参加してみて、感想はいかがですか。

稲垣:SIGNATEのeラーニングで、AI入門から実際の機械学習の展開、AIモデルの構築・精度改善までの流れを何回も繰り返しシミュレーションしながら体験できてとても勉強になりました。

ただ、急にディープラーニングのところで難しくなったので、知識の穴埋めをしようとG検定の教科書だけ購入してみたんです。そしたらAIについての内容が面白かったこともあって、2022年11月のG検定を受験しました。

――マナビDX QuestやG検定で学習時間はどれほどでしたか?

稲垣:マナビDX Questは子どもの面倒も見ながらということもあり、1日4~5時間ほど。G検定はSIGNATEを進めていたこともあり、本格的に学習を始めたのは試験の2週間前からで、学習時間は40時間ほどでした。

G検定の合格後、データサイエンティスト検定も取得しました。G検定の合格後にデジタルバッジをもらえたのが意外と嬉しかったんですよね。教科書見たら難しそうだなと思いましたが、思い切って申し込みしました。それも2~3週間ほどで詰め込んで試験に臨みました。

――マナビDX Questを選ばれた決め手の一つが「コミュニティづくり」とのことでしたが、この1年間でどのようなつながりができましたか?

稲垣:現場研修プログラムで組んだチームは、製造業の方が2人、データサイエンティストが1人、エンジニアが1人、そしてフロントエンドエンジニアの私の5人で、年代も30代から50代までいます。私の観点とは異なる目線や話の持って行き方をするので勉強になることが多くありましたし、企業訪問や食事会を通じて様々な交流ができました。プログラム終了後には、現場研修先の経営者やコンサルタント、チームメンバーに「私についてのフィードバックをください」と思い切ってアンケートを送ったところ快く回答いただきました。予想外な部分を褒めてくださったり、キャリアの方向性を指南いただいたりと大変貴重な内容で、今後に活かしていきたいと思っています。

マナビDXの中には「女子会チャンネル」もあって、夜集まって雑談することも。そこで知り合った方たちとキャリアや職場の話をしたりして、たくさんの発見がありました。

また、G検定・E資格の合格者のみが参加できる「CDLE」のコミュニティ(Slack とコミュニティサイト)にも入っています。

ゆくゆくは課題解決を牽引する人材へ

――リスキリングされた今、今後のキャリアプランをどのように描いていますか。

稲垣:リスキリングを通じて、人手不足への対応や産業力向上のためにはデジタル技術を有効に活用する必要があることを実感し、その解決をサポートする仕事がしたいと思いました。そのためにはこれまでの経験で得たIT知識に加え、経営視点をもつことが重要だとわかったので、今後強化していこうと思っています。育休から復帰後、この4月から働く異動先の部署ではITやDXの知識を活用しながら、デザインの力で顧客の課題を解決するサービスデザインの提供に携わっていく予定です。ゆくゆくは、ビジネスを俯瞰して改善策を提案する仕事ができたらと考えています。

――最後に、リスキリングを考えている方々にメッセージをお願いします。

稲垣:「AIに自分の仕事が脅かされるんじゃないか」と思いつつも考えることから逃げたり、または「自分は大丈夫」と見ないふりをしたりしている人が多いかもしれません。しかし、AIやディープラーニングの領域は必須スキルになると言っても過言ではないほど、当たり前になっていくと思います。自分から向き合いに行くきっかけとして、G検定はぴったりだと思います。教科書を読むだけでも、これまでの歴史から未来がなんとなくイメージできてすごく面白いですよ。

G検定は、一過性で学んで終わりではなく、コミュニティに参加できるところが他の資格とは異なるポイントです。CDLEのSlackやコミュニティサイトでは最新情報を発信してくれる人がいて常にアップデートできますし、イベントを通じていろいろな方とつながれるのも楽しいのでおすすめです。

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