[G検定 合格者インタビューvol.11]ディープラーニング × DXにおける若手社員の活躍
サントリーグループ各社のビジネスをITで支えるサントリーシステムテクノロジー。同社では、より的確なAI運用を進めるべく2019年からスキルアップAIの研修プログラムを導入。さらに、先端技術部の若手社員をAI研修の講師として育成している。その講師1号に指名されたのが、当時入社2年目だった中川 要(なかがわ かなめ)さんだ。G検定も取得し、社内のみならずグループ全社向けの研修でも講師を務めている中川さんに、社内講師を務めるメリットや苦労点、AIをビジネス活用するためにポイントについて聞いた。
G検定合格者プロフィール
G検定2019#3合格
中川要(なかがわ かなめ)さん
サントリーシステムテクノロジー株式会社 先端技術部
入社2年目でAIの社内講師に指名
――まず、中川さんのご所属と現在の仕事内容について教えてください。
中川:2018年にサントリーシステムテクノロジー(以下、SST)に入社し、現在は先端技術部でサントリーグループの事業におけるAI推進や技術開発、新技術の導入検討・検証を行っています。また、グループ全社に向けたAI研修の講師も務めています。
――G検定を受験されたのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。
中川:2019年に、「AIの知識を広く学んでいこう」という社内での呼びかけのもと、スキルアップAIさんのAIの研修プログラムを受講したことがきっかけです。そこでG検定の存在を知り、力試しの意味でも受験することにしました。
また、AIに関する知識やノウハウを社内・グループ全体で広めていける体制づくりが必要だということで、AIの社内講師の指名を受けました。「人に教える」という意味でも、基礎的な知識をしっかりと身につけておかなければならないと思い、G検定を受験しました。
――G検定の合格後に講師の打診があったのではなく、研修を受ける段階から事前に指名があったのですね。
中川:そうですね。私が所属する先端技術部は、入社1~3年目の若手が多く「新しい風をどんどん吹き込んでいこう」という雰囲気があります。「人に教えるということが、教える側の一番の勉強になる。」という理由で若手の講師に決まり、“講師1人目”となりました。
現在は、私より下の世代の後輩たち3~4人に講師のノウハウを教えていて、どんどん若手講師が増えている状態です。
――「若手にどんどん挑戦してもらう」というカルチャーがある職場なのですね。とは言っても、講師に指名されたとき中川さんはまだ入社2年目。当時はどのような心境でしたか?
中川:元々、人前に立つことが苦手で「まさか私に任命されるとは」という気持ちでした。大学は情報系の学科だったのである程度知識はあったものの、ビジネス適用の観点で体系だった知識は身につけたことがなく、最初は不安もありました。
――G検定の合格に向けた勉強方法や期間、学習のコツを教えてください。
中川:「講師やるのに落ちているわけにもいかない!」というプレッシャーがあったこともあり、定時後に毎日30分~1時間ほど時間を取って、テキストを読んだり問題集を解いたりするのを1カ月ほど続けていました。
また、15人ほどの社内勉強会にも参加していました。昼休みの時間やオンラインのチャットを使いながら、問題集を解いていてわからないところを教えあったり、受験時に持ち込むシートのポイントの共有をし合ったりしていました。同僚が頑張っている様子を見て「自分も頑張ろう」とモチベーションが湧いてきましたね。
――学習をされてみての感想はいかがでしたか。
中川:入社してからAIを使った業務もありましたが、画像解析のAIのAPIを使って、「ちょっと構築しました」というぐらい。大学でも機械学習を学び研究でも使ってはいたのですが、ほぼ忘れてしまっていて、勉強しながらだんだん思い出していく感じでしたね。
学習したことで、AIに関する全般的な知識を身につけることができて、「これだけの知識があればある程度人には教えられるかな」という自信はつきました。また、法律や歴史、実際の先端的なAIの研究事例など、様々な方面の知識を得られたのは面白かったですね。法律の問題は、AIを使っていくにあたっては「こういうことも考えなきゃいけないんだ」と、これまで全く意識してこなかったことも知ることができました。
社内とグループ向けで研修内容をカスタマイズ
――AIの社内講師について、研修の詳細を教えてください。
中川:最初は、新人研修や先ほどのスキルアップAIさんの研修を受けていない人たち向けに行いました。この研修はSST内でAI知識レベルを底上げする狙いで、全員必須の研修として約1年間かけて何回かに分けて行いました。その後、研修内容を一般向けにさらにブラッシュアップし、サントリーグループ各社向けにも行いました。グループ向けの方は、自ら手を挙げて申し込んだ人や上長から受講するようにアドバイスを受けた人たちが集まる応募型研修のひとつとして、3カ月に1回行っていました。
研修は丸1日かけて行います(オンラインでやる場合は2日に分けることも)。内容はスキルアップAIさんの講座をベースに、サントリーのAI活用事例を入れて社内向けにカスタマイズ。サントリーグループ向けの研修はさらに手を加えて、情報を上乗せしたり、一般向けにわかりやすい表現に変えたりしながら講座をつくっていきました。
受講者の数は回によってまちまちで、十数人から30~40人のときもありましたが、これまでSSTの社内・グループ含めて330人以上が受講してくれました。
――“研修内容のカスタマイズ”は、具体的にどのように行っていたのでしょうか?
中川:私と先端技術部のメンバーとで考えていきました。スキルアップAIさんの講座を受講した上で、「どういう内容にしたら伝わりやすいか」「こういう事例を入れたらわかりやすいのではないか」と、先端技術部の部長や課長などの上の立場の人から若手まで、みんなでアイデアを持ち寄ってもらって研修に組み込んでいきました。
――先ほど、講師に指名されたときは「不安もあった」とおっしゃっていましたが、実際に研修をされてみていかがでしたか。また、最も苦労したところはどこですか?
中川:最初は戸惑いしかなかったので、たくさん練習時間を取らせてもらい、準備をしっかりした状態で何とか臨んでいました。本番ではたくさん失敗もしましたが、社内向けなので失敗しても怒られず「いいよいいよ」と言ってくれたこともあり、徐々に自信をつけることができました。研修の3、4回目になるとだいぶ慣れてきて、緊張しながらも質問にもスムーズに答えることができるようになっていました。
苦労した点は、SST向けからグループ全社向けの研修に移ったときです。SSTの社員は情報系出身の理系が多いので、AIや機械学習の知識の前提条件もある程度揃っています。一方で、グループの事業部の方たちのバックグラウンドや知識レベルはさまざま。「AIってテレビで見たことあるよ」「AIって結局全然ダメなんでしょ」と言う人たちに、どういう伝え方をすれば「AIとはこういうものなんです」と伝えることができるのか、とても腐心しました。
――そういった方に向けて講師をするにあたり、気をつけていたことは?
中川:ありきたりな回答ではありますが、相手の立場に立った言葉の使い方や説明をすることが大事だと痛感しました。IT部門の人には馴染みがある単語でも、そうではない人たちには何が何やらさっぱりわからないということは結構あったので、気を遣って話すことで理解してもらえることが多かったです。
――社員の方からの嬉しかった反響や、手応えを感じた瞬間はありますか?
中川:「AIはこういうものなんだ」と理解してくれたと実感できたときは嬉しいですね。研修は、最初に座学で学んでもらったあと、後半にAIを使ってどういうことができるかを考えるグループワークの時間があります。そのときに、最初は「全然AIに詳しくないんです」と言っていた人たちが、「自分たちの業務の中ではこういうところが改善できるんじゃないか」と熱く議論してくれている様子を見ると、本当に「よかったな」と思いましたね。
AIに関わらない部署の人ほど「考え続けてほしい」
――学んだことを通じて、今後取り組んでみたいことはありますか?
中川:当初は、AIの中身にはあまり興味がなくて「使えればいいかな」という感じだったのですが、G検定を合格したことで、E資格などの次のステップへの興味や意欲も出てきました。E資格に向けた勉強をしたり研修を受けたりして、より深い知識を得るようになったことで、研究領域で使うAI開発において、「こういったAIが適切なのではないか」という提案もできるようになってきました。
――講師の経験を経て、AI活用に関するマインドセットに影響はありましたか?
中川:AIの知識を持っている立場の人間として、自ら「AIを広めていこう」という主体性が生まれたように思います。AIによってより効率的に働いてもらいたい、面白い新しい事業を立ち上げてもらいたい、そういった気持ちで仕事をする場面が増えました。
――実際に学習したことをビジネスに生かしていくために必要な考え方について。IT部門だけでなく、事業部門の方だからこそ学んで欲しいという思いはありますか。
中川:私が所属する先端技術部は、会社の業務にAIをどう活用し運用していくかを考える部署なので、業務内容にAIが直結しています。しかし、そうではない、普段AIに関わらない部署の人ほど「自らの仕事でAIを使うとしたらどこに使うのか」を考え続けてほしいというのが研修講師としての思いですね。
私たちには思いつかないようなアイデアが、事業部門の方だからこそ出てくることがあると思います。事業部門の方たちは、手段を知らないがゆえに「こういうことってできないの?」と思ったことすらない場合もあると思います。そのために、効率が悪くてもしょうがなくやり続けてしまっている仕事がある。そんな状況はとてももったいないなと思います。各々が「こういったAIを活用できるんじゃないのか」と、少しでも思ってくださったら、あとは私たちのような先端技術部の人間たちが、「そこはこういうAIをつくったらいいんじゃないですか」と実現のために考えていくことができる。そういった形が理想だと思っています。
――講師として様々な粒度の受講者の方々の支援をされてきた中で、G検定合格まで辿り着くためのモチベーション維持のポイントはどこだと思われますか?
中川:G検定を取ることを目標にするのではなくて、G検定を自分の中の足がかりにする、G検定のその先を見つめられたらいいのではないかと思います。「こういったところでAIの知識を使うために、知識をつける手段として、G検定を使う」というマインドで学習をされている方はしっかりと合格されているように思います。私も多少知識はあったとはいえかなり必死に勉強しましたが、そういうマインドだったからこそ合格できたのかなと思っています。
――最後に、今後どういった人材として活躍していきたいか、意気込みをお願いします。
中川:AIを作れる・使える人間として活躍していきたいということがまずひとつです。加えて、AI研修で相手のことを思って資料や伝え方を工夫するという経験をしたことで、ユーザー体験にも興味が湧き、ユーザー体験の最適化のために先端技術を使えないかと考えるようになりました。サントリーでは一般向けの製品を扱っているので、そういったところにAIや先端技術を活用していけるような人材になっていきたいです。