SMBCグループ日本総研のE資格合格者に聞く ~ 合格までの道のりと学習で得られたものとは?

SMBCグループは金融業界において、いち早くデータ活用に取り組んできました。今回、そのSMBCグループである株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)、データサイエンスグループを訪問しました。

日本総研はSMBCグループの一員として、経済・社会の本質を的確に捉えるリサーチ機能、時代に求められる産業を創造するインキュベーション機能、持続的な成長の基盤を構築するコンサルティング機能、そしてデジタルイノベーションを実現させるITソリューション機能などを担っています。

また、日本総研のデータサイエンスグループは「E資格」(主催:JDLA)の受験を奨励しており、多くのE資格保有者が誕生しています。日本総研データサイエンスグループのE資格保有者のみなさんにお話を伺いました。

Profile

株式会社 日本総合研究所 データ・情報システム本部 データサイエンティスト
下河邊 行央氏

株式会社 日本総合研究所 データ・情報システム本部 データサイエンティスト
半澤 智希氏

株式会社 日本総合研究所 データ・情報システム本部 データサイエンティスト
荒木 佑太氏

資格取得に前向きな土壌があった上に、会社の後押しが大きかった

――現在の部署と、簡単に業務内容を教えていただけますか?

下河邊氏 : 私は、グループ内のクレジットカード会社向けにデータ分析業務を担当するデータサイエンティストとして、売り上げ予測モデルやマーケティング関連の機械学習モデルを作るなどを業務としています。

半澤氏 : 私は、主に銀行向けのデータ分析業務を担当するデータサイエンティストで、現在は法人に対するキャッシュレス推進についてのデータ分析支援を行っています。

荒木氏 : 私は、業務の半分はデータサイエンティストとして銀行向けのデータ分析業務に携わっており、残り半分は開発標準やルール整備など組織運営業務を担当しています。

――ありがとうございます。みなさんがE資格を受験するに至ったきっかけや理由を教えていただけますか?

グループとして資格取得にポジティブな雰囲気があると話すデータサイエンスグループの3名

下河邊氏 : 日本総研自体が資格取得を強く推進する会社です。私たち3人はデータサイエンティストとしてではなく、ITエンジニアとしての入社でしたが、その時から「基本情報技術者」や「応用情報技術者」などの資格を取得してきた経緯があります。今回データサイエンスグループに配属され、データサイエンスのスキルを測るためにE資格が採用されたこともありまして、自身のスキルチェックも兼ねて受験し、私は2023年の夏にE資格を取得しました。普段は機械学習をよく使っており、業務の中でディープラーニングの知見を得られるタイミングがあまりなかったので、いい機会だと思ったところもあります。

半澤氏 :私はデータサイエンスグループに来る前から、G検定に興味を持ち、取得しています。そこから知識を身につけるだけではなくて、データサイエンスグループの一員として実際に手を動かし、実装できるようになりたいと思いました。それを可能にするのはE資格だと思っていた時に、会社からE資格が推奨され、受験することに。私も会社の業務としてはディープラーニングを使う機会はまだ多くないのですが、これからその機会が増え、ニーズが高まった時に使えないのは嫌だなと思っていました。選択肢がたくさんある状態にしておきたかったのです。

荒木氏 : 私もG検定を取得していまして、いつかはE資格もと思っていました。私は社会人歴でいうと6年目なのですが、データサイエンティストとしてのレベルを示す必要がありました。データサイエンティスト協会発行のスキルチェックシートでは、スキルレベルとして「見習い」「独り立ち」「棟梁」の3つにカテゴライズされており、自分には「独り立ち」という証(あかし)みたいなものが必要だなと思った時、ちょうどいいレベル感の資格として、E資格がいいと感じて受験しました。

――みなさんがE資格を取得することに会社(日本総研)からは何か後押しがありましたか?

下河邊氏 : そもそもE資格に限らず、先ほど話したようにシステム開発の資格取得については、幅広く会社から支援してもらってきました。会社全体が資格取得にとてもポジティブで「資格を勉強しながら仕事をする」ことが割と一般的だと思います。毎年上司と行う目標管理の場でも、どんな資格を取るかということも話しています。とくに今回大きかったのは、「業務上のスキルをE資格で認めます」という定義付けをしてくれたことですね。“この資格を取れば評価します”と決めていただいたのは、すごくよかったです。それに加えて、受験費用の補助や受かった場合の報奨金などもありがたかったですが、どちらかというと、“この資格に受かったら認めます”といった定義付けが大きかったと感じています。

半澤氏 :グループとして資格取得にポジティブな雰囲気があるので、後押しがなくても勉強すると思います。でも、そこに会社が認めてくれるということがすごくモチベーションにつながったのではないでしょうか。夜の11時に寝ようかなというところで、あと1時間、勉強を頑張れる(笑)。それは会社として定義を確立してくれたからだと思っています。

荒木氏 : 当社の20%ルール(※)の存在も大きいと思います。自己研鑽として目標管理をしていけますので。(※日本総研データサイエンスグループでは、業務時間内の20%を自己研鑽に充てていいというルールにしており、E資格の受験勉強などデータサイエンス関連の勉強時間、学会参加などに活用しています。)

――20%を勉強に使う時間に充てるとすると、通常業務が忙しくなった時に両立しづらいことはありませんか?

荒木氏 : そもそもユーザーは、週4日と考えていつまでに終わりますという工数の調整はしています。どうしても逼迫する時はもちろんありますが、20%は毎週使わなければならないというものではありませんので、適切なタイミングで消化するという風に考えています。

E資格取得に向けた工夫と、学習するうちに上がってきた「基礎体力」

E資格の学習で基礎体力が上がった感じと話す荒木氏

――E資格を受験した時、何か工夫したことがあれば教えていただけますか?

荒木氏 : 数学や機械学習については、あらためてそんなに勉強しなくても、業務でやってきた経験や、統計検定を勉強してきた経験もあるので、ある程度は何とかなると見越していました。しかし、ディープラーニング周りのことと新しいニュースについては、けっこう勉強しないと大変だと感じていましたね。ニュースについては運もあるので、とにかくディープラーニング周りのところをひたすら何周も何周も重点的にやりました。

半澤氏 : 私もディープラーニングの知見を身につけたいと思っていましたから、そこに注力したのが一つ。あとは、荒木さん、下河邊さんと周りで受けた方がいたことで、情報共有とモチベーションを維持するのに助かりました。とくに下河邊さんが私より早くE資格に合格していて、そのお話を聞くことで、より合格に近づけたと思っています。

下河邊氏 : アドバイスさせてもらったのは講座(JDLA認定プログラム)選びで、どこの会社を選ぶかみたいなところです。自分が受けた講座はどうだったというのを話したりしていました。あとは追加でこういうテキストを見るといいよという話はしましたね。私が受けた時は、元々ディープラーニング周りは深く分かっていないという感覚がありまして、それを払拭するのが狙いの一つでした。そういったところもあり、工夫した点で言うとディープラーニングの進化の歴史を整理しながら勉強したのがよかったと思います。

――みなさん、そうやって学習していくうちに身についたことはありますか?

荒木氏 : 今の時代は技術革新が早すぎて、“いったいどこから勉強する?”みたいに困ることがありますよね。E資格の学習の過程で、体系的かつ時系列に技術の発展を学べるので、ひと通りの用語やその成り立ちが分かるようになりました。最終的には、学会や論文などに出てくるキーワードや話題を拾いやすくなってきたと感じました。基礎体力が上がった感じですかね。

半澤氏 :基礎体力をつけることによって、ディープラーニングに対しての抵抗感がなくなりました。当初目的としていた、ディープラーニングを使ったプログラム実装ですが、今は何とか手は動かせるようになるところまで持っていけたと感じます。

下河邊氏 : 私は、生成AIで用いられている技術を理解するための最低限の下地ができたと思います。生成AIに用いられている重要な技術の一つとしてTransformer(トランスフォーマー)があると思いますが、そこはE資格でずばり聞かれてくるところですし、Transformerに至るまでの技術などについても聞かれますので、生成AIの理解には非常に役立ちます。

生成AI活用にもE資格で得た知識が役に立つ

――少し似た質問になりますけれど、E資格を取得して、自分の中で何か変化を感じるところはありますか?

荒木氏 : 今の話に出た生成AIですが、私のミッションの一つに「生成AIの活用推進」があります。その取り組み方のスタンスがちょっと変わったと思います。例えば生成AIを活用するという時に、取りあえず流行りの技術をやってみたというアプローチではなく、もっと深いところから学んで、より高レベルな取り組みを思い描けるようになってきたなと感じています。

半澤氏 : 私は業務の中での視野が広がったと感じます。ディープラーニングの知識を得ることによって、新しい可能性をこちらから提供できるようになり、ビジネス的にも価値を創造できる機会にもつながると思います。もちろんビジネス側の深いところまでは、まだ踏み込めてはいませんが、こちら側から、“技術的にこういうものがあるから、こういうことができるんじゃないですか”と提示するなどして、ビジネス側と双方歩み寄って新しい価値を作れたらいいなと考えています。

下河邊氏 : 生成AIを活用する側として、きちんと中身を分かった上で活用していくとか、トラブルシューティングができるようになるためのきっかけになったと思います。もちろん、このE資格を受ければ、隅から隅まで分かるというものではないとは思いますが、まずはそのファーストステップ。生成AIにつながるまでの技術をちゃんと把握しておくということが、中身を理解する手助けには確実になったと考えています。

E資格で学んだ知識は生成AI活用にも活きていくはずと話す下河邊氏

――生成AIは基本的に中身を知らなくても、誰でも使いこなせて、どう活用するかという話に発展しがちだと思います。それに対して、E資格のように基盤となる技術など広く体系的に学ぶということは、対極にあるのではと思っていました。

下河邊氏 : 繰り返しになりますが、中身を分かって使うのと、よく分からないまま使うのは全然違うと思います。我々はどちらかというとビジネス側というより、分析の技術を使って結果を出す側ですので、何となく(生成AIを)使っていいものを出せばいいということではないと考えます。ちゃんと中身を分かった上で、もし何か問題が起きたら解消できるし、いいものを出していくというところに、E資格で学んだ知識が、まさに生成AIの活用に今後活きていくものと感じています。

荒木氏 : やはり立場によって違うのでしょうね。ユーザー側の立場、つまりデータ利活用側でしたら(生成AIを)どんどん使っていけばいいと思います。一方我々は、ユーザーがデータ利活用する上で困っていることを解決する立場ですので、我々エンジニアとしては、(E資格で学ぶことは)非常に重要と感じます。

下河邊氏 : そもそも我々は生成AIを使いたいわけではなくて、何かの課題をクリアしたいわけです。生成AIの中身を知っているからこそ、「それって別に生成AIではなくてもいいんじゃないですか?」みたいな話もできますし、そこにE資格で学んだことが役に立つと考えます。あくまでツールの一つですよね。“生成AIだけあればいい”というのでなくて生成AIには得意なもの、苦手なものがあるというところを、ちゃんと把握しておくべきということでしょう。

取得したE資格を業務に役立てていきたい

興味ベースでやってみることと環境を整えることが大事と語る半澤氏

――今回E資格を学んだことを通じて、会社の業務を通じて取り組んでいること、あるいは今後取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

荒木氏 : 今の話にも通じますが、生成AIを一つのツールとして提案できるようになっていきたいので、徐々にそれに関わる案件を拡大していきたいと考えています。あと、自分でもどんどん新しい技術を取り入れるために勉強を続けたいです。例えばプライベートでも、画像生成AIを使うのですが、1週間も経つと、また違うツールが生まれてくるのですね。また新しく勉強しなくてはなりません。どんどん情報収集をしながらも、適切に取捨選択して、さばけるようにしたいです。これはデータサイエンティストとしての業務にも確実に活きるはずです。

半澤氏 : 今後取り組みたいことは、せっかく学んだことを活かせるように、視野を広げながら案件を進めていくことです。ディープラーニングの知見を使って、少しでもビジネスの課題解決につなげられるように案件に向き合っていきたいと考えています。

下河邊氏 : 私も業務でディープラーニングやE資格で学んだ内容を活かしていきたいと思っているのですが、金融のデータは、はじめからほとんど数字になっているので、機械学習で済んでしまうことが多いです。そんな中で、ディープラーニングを使わないと生み出せないビジネスの効果を探っていきたいです。

――貴社のメンバーが学びに対してポジティブなことがよく理解できました。しかし、なかなか学び続けるのは難しいという方も世の中には多いと思います。学び続けるためのコツといいますか、ポイントがあれば教えていただきたいのですが?

下河邊氏 : 私自身そんなに学習意欲が高いかと言われますとそこまで自信がないですが(笑)。あえて話しますと、個人的には勉強しようと思って勉強をするのではなくて、先ほども話したように、ビジネスの課題がある中で、どういう風にその課題に立ち向かおうかと考えますよね。そうすると(解決につながる)いろんな技術があることが分かります。そしていろんな技術を学んでいく中で、いつの間にか自分の知識や力になるところがあります。なので、ビジネス課題をどうクリアするか、それに使えそうな技術は何かというところをまず頭の中で思い浮かべて、深く調べていくというところから勉強がスタートすると思います。

半澤氏 : 二つありまして、一つ目は興味ベースでやってみること。なんかこれ面白そうというところに取りあえず手をつけていきます。二つ目は環境を整えること。勉強している人や情報発信している人が周りにいるとモチベーションが高まります。例えばJDLAの合格体験記を見るとか、Xで情報発信している人をひたすらフォローしてみるとかを、私は実践しています。

荒木氏 : 私が一番に思うのはコミュニティを作ることかなと。“こそこそ勉強しない”というのが大事だと思っています。落ちたらどうしようとか、コンペの順位が上がらなくてダサいんじゃないとか。そんなことを全部取り払って、自分がやっていることをどんどん公開していくと、ポジティブな雰囲気が生まれて、やる気になるのではないでしょうか。

――本日はありがとうございました。

インタビューを終えてくつろぐみなさん

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