多くの企業がDXに注目し、デジタル変革を進めています。DXの活用を通じて、既存システムの老朽化やIT人材の不足といった課題に対処し、業務効率の飛躍的な向上が求められています。
特に、2018年の「DXレポート」が警鐘を鳴らす「2025年の崖」を乗り越えるためには、効果的なDXの活用が不可欠です。DX推進には、レガシーシステムからの脱却、新システム構築による負担、そしてIT人材の確保や育成が課題となります。
本記事では、DXの活用や推進が求められる理由や、実施すべき4つのステップについて解説します。DX活用を推進した具体例として、有名企業が取り組んだ実績も紹介するため、ぜひ、自社におけるDX推進の参考にしてください。
DX・データ活用とは
そもそもDXとは、デジタルトランスフォーメーションの略語で、データやデジタル技術を駆使して業務・プロセス・企業文化などを変革して競争上の優位性を確保することです。DXとは、デジタル技術を用いて企業の競争性を高めることを指します。
また、データ活用とは企業が収集・蓄積したデータを分析・加工・検証し、ビジネスの拡大や課題解決に役立てることです。
DXを、単にデジタル技術を導入することであると理解している方も多いでしょう。しかしDXには、導入したデジタル技術を用いて何らかの企業内変革をもたらす意味合いが含まれています。
DXの推進により、企業にとってプラスの影響が及ばないと、取り組む意味がありません。DXを目指す際は、導入するデジタルツールの選定に終始するのではなく、ツール導入により企業にどのような変化を提供できるのかを検討しましょう。
DXが推進される理由
現在は、DXの活用を推進している企業は多いですが、その理由とは何でしょうか。ビジネスシーンにおけるDX推進の流れは、時代背景や企業が抱える問題が影響していると考えられます。
多くの企業においてDXが推進されている理由として、主なポイントを以下に3点紹介します。
- 既存システムの老朽化
- 深刻なIT人材不足
- DXレポートと2025年の崖
既存システムの老朽化
業務などで活用している既存システムが老朽化しているため、最新システムへの刷新を目指してDXを推進する動きが顕著になっています。
既存システムは、長期間利用している中で経年劣化が進んでいるだけでなく、デジタル技術の向上によって相対的に価値が下がっているのです。また、既存システムはほかのデジタルツールとの連携が難しく活用の幅が狭いことも問題です。
老朽化・陳腐化が進んだ既存のシステムの替わりに、最新の機能を持った新規システムを導入する企業が増えています。老舗の企業ほど旧式の既存システムを使用しているケースが多いため、DX推進の必要性に迫られている状況にあります。
深刻なIT人材不足
IT人材が不足していることも、DXを推進する要因になっています。IT関連の知識と技術を持つ人材への需要の増加に対して、供給が追い付いていないのが日本企業の現状です。
特に、ビッグデータやAIなどのIT技術の活用は、今後さらに機会が増えてくると考えられています。最先端のIT技術を扱える高度な知識と技術を持つ人材に対する需要も、伴って拡大していくでしょう。
将来的なIT技術拡大に備えて、DX推進ができるIT人材の確保は、ビジネスシーンにおいて欠かせないものとなってきています。不足するIT人材をいかに補うかは、多くの企業の喫緊の課題といえるでしょう。
DXレポートと2025年の崖
DX推進が積極的に進められる背景には、経済産業省が2018年から2022年までに4回発表したDXレポートの存在があります。特に、2018年のDXレポートにおいて「2025年の崖」問題が取り上げられたことは、DX推進に大きな影響をもたらしています。
2025年の崖問題とは、DXを推進しなかった場合に多くの企業が2025年以降に被る経済的な損失のことです。DXレポートでは、DX推進に対応せず放置していた場合、以下のような問題が起こると予想しています。
- 世界的なデジタル競争に敗北する
- 老朽化した既存システムの維持費が膨大にかかる
- セキュリティリスクが高まる
経済産業省が明確にDX推進を喫緊の課題としているため、企業のDX推進は社会的な要請として避けてとおれない状況になっています。
参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~/経済産業省
DX推進の課題
DXの推進を進める際には、多くの企業がさまざまな課題に直面します。DXを進めて事業活動に変革をもたらすためには、課題となる事項の解決が不可欠です。
DX推進を行う上で多くの企業が抱える課題のうち、主要な項目を以下に4点紹介します。
- レガシーシステムからの脱却
- 新しいシステム構築による負担
- IT人材の確保・育成が必要
- 目的やビジョンが浸透しにくい
レガシーシステムからの脱却
既存のレガシーシステムからの脱却は、DX推進における課題になるケースが多いです。レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築されているシステムのことです。既存システムを長期間使うほど、新しいシステムへの刷新が困難になります。
旧システムはほかのシステムとの互換性が低いため、システムが蓄積しているデータの汎用的な活用が難しいです。レガシーシステムに慣れている社員が多い場合も、システム刷新において問題になりやすいといえます。
レガシーシステムの将来的な活用可能性を十分に検証して、DX推進の障害になると判断される場合には、新規システムへの切り替えを検討する必要があります。
新しいシステム構築による負担
DX推進を目的に新しいシステムを構築する場合、費用面の負担が課題になりやすいです。既存システムの代替として、新しいシステムの導入や開発を行う際には、一定の費用が発生します。資金不足で自社企業に適したシステムを用意できないと、十分なDX推進の効果が得られないでしょう。
また、従業員にとっても負担を強いることになります。業務をこなしながら新しいシステムの運用を理解する必要があるため、負担増は避けられません。従業員に新システムの教育や浸透を行なうためにも費用が発生する場合もあります。
IT人材の確保・育成が必要
DX推進のためには、IT関連の知識と経験を持つ人材の確保や育成が必要になります。社内でのDX推進を目的に新システムの導入をする場合にも、IT関連のノウハウは不可欠です。
DX推進を行える人材がいない場合、外部から適材を獲得して対処することもできます。あるいは、社内で人材を育成して対応する方法もあります。
外部から人材を獲得するためには、費用がかかるのが一般的です。既存の社員にITのノウハウを教育する場合では、費用だけでなく時間もかかるでしょう。IT人材の確保は、DX推進を図るうえで重要かつ難しい問題です。
目的やビジョンが浸透しにくい
DX推進を目指す目的や、DX化による将来的なビジョンを浸透させるのが難しいのも、DX推進における課題の1つです。DX推進はそもそも長期的な視点で取り組む規模の大きなプロジェクトであるため、従業員ひとりひとりに目的やビジョンが見えづらい側面もあります。
業務の変革やシステムの入れ替えなどは、従業員に負担を強いることになります。企業としての方向性を印象付けるため、まずは社内および従業員に対して明確な目的やビジョンを示すことが大切です。
DX推進における課題の解決方法
DX推進を行うにあたり、さまざまな課題に直面するでしょう。DX化を推し進めるためには、直面する課題の解決方法を知っておく必要があります。
DX推進における課題の解決方法として、代表的なものを以下に3例紹介します。
- 既存システムの分析・評価を行う
- 経営層がDXによる経営戦略を明確にする
- 社員の研修や資格取得による人材育成
既存システムの分析・評価をおこなう
DX推進を検討する際は、既存のシステムの分析と評価が大切です。DX化は、単に新しいシステムを導入すればよいというものではありません。企業によっては、既存システムを活かしながらDX推進を図ったほうがよいケースもあります。
既存システムをベースにして、新しい機能を追加するほうが効率のよい場合もあるでしょう。一方、既存システムではDXの潮流についていけないと判断される場合は、新しいシステムの導入を検討する必要があります。
既存のシステムをどのように扱うのかによって、DX推進の方向性は大きく変わります。既存システムの分析と評価を厳正に行い、DX化の方向性を決定することが大切です。
経営層がDXによる経営戦略を明確にする
DX推進を行う際は、企業の経営層がDXによる経営戦略を社内で明確に示す必要があります。DX化は、企業の方向性を決定づける最重要プロジェクトであるため、全社員が一丸となって取り組むことが肝要です。
全社員が同じ方向を向いて進んでいくためには、経営層からのDXを含めた経営戦略の提示が有効です。DX化を進めてやりたいことや、創造したい価値の内容などを具体的に示すと、社員も納得したうえでDX推進に取り組めるでしょう。
経営層は、企業の方向性を決める重要なかじ取り役です。社員がDX推進に迷いなく取り組めるよう、経営戦略の明確な提示が求められます。
社員の研修や資格取得による人材育成
DX化に貢献できる人材を育成するため、社員研修や関連の資格取得の支援を通じた人材育成も、DX推進の有効な手段のひとつです。DXには、ノウハウと知識を持った人材が不可欠です。
社員に対してDX関連の研修を実施したり、関連する資格の取得を支援したりして、人材を育成するとよいでしょう。育成する人材は、幅広い年齢層や所属先から選択したほうが、社員間の理解が得られやすいです。
DXに関する知識の習得には、G検定の活用がオススメです。AIをはじめとした最新のデジタル関連の知識を体系的に学べるため、企業のDX推進を目指すうえで実践的な知識とスキルを身につけられます。
DX・データ活用を推進する4つのステップ
DXの推進により自社データを上手に活用できるようにするためには、順に取り組みたいステップがあります。単にデジタルツールの導入でDXは完結せず、十分な準備や分析などが必要です。
ビジネスシーンにおいてDXを活用するための基本的な4つのステップを、以下に紹介します。
- 現状・課題を把握する
- データを活用できる人材・組織体制を構築する
- デジタル化により業務効率を向上させる
- データを蓄積・分析・活用する
現状・課題を把握する
DXの推進にあたり、まずは自社で取り組んでいるビジネスの内容や社内の状況を正確に把握し、取り組むべき課題が明確になるよう可視化することが必要です。既存システムのみではなく、データ管理の状況や社員を中心にした人材の能力など、業務に関連する事項を全般的に把握します。
収集した情報をベースにして課題を明確にし、DX化により解決できるかどうかを検証します。現状把握を常に最新の状態に更新することにより、取り組むべき課題もアップデートされ、効果的なDX推進の方向性を決定できるでしょう。
データを活用できる人材・組織体制を構築する
DX推進を行うため、自社のデータを活用できる人材を集め、組織の体制として構築する必要があります。DXを推進するためには、実働の部隊として人材の選定と専門の組織の構築が必要不可欠です。
既存の組織にDX推進を担わせるのか、新たにメンバーを集めて組織を作る必要があるのかなどを、企業内の人材や組織の状況を鑑みて決めます。自社内で人材が不足する場合は、エンジニアなど専門家を外部から確保する必要もあるでしょう。
データ活用ができる人材と組織を、外部からの確保も含めて構築することは、DX推進において欠かせないステップとなります。
デジタル化により業務効率を向上させる
デジタル化を進めて、企業内で実施する業務効率の向上を目指します。デジタルツールの導入により人員的な手間を減らし、業務上の負担を軽減するステップです。
前段階で検証した自社の課題を解決するために最適なデジタルツールを選び、導入することが肝要です。課題は企業により異なるため、評価が高く利用実績の多いデジタルツールを選んでも、相性がよいとは限りません。
DX推進の組織を中心として、長期的な視点で自社と相性のよいツールを導入しましょう。
データを蓄積・分析・活用する
デジタルツールの導入により獲得したデータを蓄積・分析・活用するのも、DX推進に欠かせないステップです。デジタルツールを活用すると、紙面などアナログでの管理をしていたデータがデジタル化されます。
デジタルデータは、顧客の管理や分析に役立ちます。データに基づく意思決定は、客観的な根拠がベースにあるため、高い効果が期待できるでしょう。
デジタル化で得られたデータは、新たなビジネスチャンスにつながる可能性を秘めています。データの効果的な活用は、DX推進の目的である自社体制の改善や変革を達成するための重要なステップです。
身近にあるDXの事例3選
近年、身近な企業がDX推進に取り組んだ活用事例は多くあります。これからDX推進を目指す企業担当者の方は、ぜひ、他社の事例を参考にしてノウハウを取り入れてください。
企業がDXに取り組んだ事例として、以下の3例を紹介します。
- 【電通】AIを活用した視聴率予測
- 【三豊AI開発】ロボットとAIを組み合わせたソリューションを開発
- 【IntegrAI】アナログメーターの数字をデータ化
【電通】AIを活用した視聴率予測
広告代理店大手の株式会社電通は、AIを活用したテレビ視聴率の予測システムを開発しました。視聴率予測にはAI技術が用いられており、細かい条件の予測結果が自動で得られます。
関東・関西・名古屋の主要3地域ごとの予測結果が測定可能です。また、性別・年齢・家族構成など最大140のセグメントごとの視聴率予測ができる優れたシステムです。
これまで人力で行っていた視聴率予測を、AIが膨大なデータを分析して自動的に行えるようになったのは、テレビ業界において画期的な事例といえるでしょう。
【三豊AI開発】ロボットとAIを組み合わせたソリューションを開発
AI技術研究を主たる業務としている株式会社三豊AI開発は、ロボットとAIを組み合わせたさまざまなソリューションを提供しています。特に注目を集めているのが、AI送電線点検システムです。
AI送電線点検システムは、ドローンとAI技術を組み合わせて送電線の点検を行うシステムです。ドローンに3つのカメラを搭載してさまざまな角度から電線を撮影します。ドローンが撮影した画像を、ディープラーニングが分析して異常箇所を検出する仕組みです。
作業員の手間を大幅に削減しつつ、正確な点検ができるAI送電線点検システムは、DX推進におけるAI活用の好例といえるでしょう。
【IntegrAI】アナログメーターの数字をデータ化
製造業などにAIツールの提供を行う株式会社IntegrAIは、産業機器などのアナログメーターを数値データとして活用する仕組みを提供しています。アナログのメーターをDX技術により自動でデータ化する画期的な仕組みです。
アナログメーターをカメラで撮影し、その画像をディープラーニングで解析して数値として活用します。あらかじめ設定しておいた基準値を超えると、自動でアラートが発せられる仕組みも導入しています。これまで目視で確認していた部分を、AIで自動化したDX好例です。
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企業のDX化やデータの活用を推進するためには、企業の現状と問題把握をしたうえで、DXに関する知識を持つ人材を組織する必要があります。DXを推進する人材を組織するためには、DXの知識習得に向けた人材育成が欠かせません。
DXに関する知識を社員に学ばせたいと考えるなら、ぜひG検定の活用をご検討ください。G検定とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が運営するAIなどデジタル技術の活用について学べる検定試験です。
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まとめ
ビジネスシーンにおけるDXの活用は、既存システムの老朽化やIT人材不足を背景として多くの企業で喫緊の課題になっています。DX推進を実行する際には、新システム構築の負担や社内での目的意識の浸透など多くの課題があります。
DX推進における課題を解決するには、現状の問題把握を行いDXによる経営戦略を運営陣が明確に示すとよいでしょう。そのうえで、DX推進を実行できる人材の育成が不可欠です。
DXに関する人材を育成する際には、G検定の受講を検討してみてはいかがでしょうか。G検定の学習をする中で、企業におけるDX推進において必要な知識や技術の活用方法などが体系的に学習できます。
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