AIは生活を便利にしてくれるだけでなく、業務効率化や分析精度向上などビジネスシーンにおいてもさまざまなメリットがあります。
近年AI技術の進化は目覚ましいものがあり、今後も進化し続けることでしょう。しかし、AIでは対応できない領域もあるため、万能とはいえないのも事実です。
AIの導入を検討する際は、メリットだけでなくデメリットについても理解する必要があります。
本記事では、AIのメリットとデメリットについて解説します。AIのメリットがわかる成功事例と、AIリテラシーが身につく検定も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
AIとは何か
AI(Artificial Intelligence)とは、知的活動をコンピューターにより再現する人工知能のことです。
知的活動とは、記憶・判断・計算など、認知能力により物事を判断したり見極めたりする活動を意味します。
AIの要ともいえる機械学習やディープラーニング(深層学習)技術を活用すれば、人では対応しきれない領域への対応も可能です。
近年では日常生活をはじめ、医療現場・教育現場・ビジネスまで、さまざまなシーンでAIが活用されるようになっています。
AIを導入するメリット8選
AIにはさまざまなメリットがありますが、導入するシーンによっても得られるメリットは変わっていきます。
AIによるメリットを最大限に活かせば、新たなビジネスモデルの構築も実現できるでしょう。
企業がAIを導入する際は、自社が抱えている課題を解決できるかが重要です。ここでは、企業がAIを導入すると得られる8つのメリットについて解説します。
- 人手不足の解消が可能
- 生産性の向上が期待できる
- 人件費の削減が可能
- 人的ミスや事故の減少
- 高精度なデータ分析や予測をできる
- 遠隔でのコミュニケーションが可能
- ビッグデータの活用で顧客満足度向上
- 人間しかできない作業に専念できる
人手不足の解消が可能
AIの活用により人手不足を解消できるのは、大きなメリットです。
近年インターネットの普及にともない、企業を取り巻く環境や消費者行動は様変わりしています。
また、働き方改革や高齢化社会の影響により、慢性的な人手不足の課題を抱える企業や業界は少なくありません。
そこでAIを搭載したシステムやツールを導入すれば、これまでの人的作業を自動化できます。
工程の多い作業もAIを活用すれば、作業時間の短縮や業務効率にもつながるでしょう。
慢性的な人手不足の課題を抱える企業でも、在籍する従業員で業務をこなせます。
生産性の向上が期待できる
生産性の向上につながるのも、AIの導入で得られるメリットです。
従業員によって経験やスキルが異なるため、業務品質に差が生じるのは仕方ありません。業務内容によっては、モチベーションが成果に影響することもあるでしょう。
人的作業では、個々のスキルや感情が業務に影響することも少なくありません。
しかしAIであれば、個々のスキルや感情に左右されないため、業務の標準化が可能です。業務が標準化すれば、生産性の向上効果が期待できます。
人件費の削減が可能
AIは、人件費削減にも役立ちます。
これまでの人的作業をAIがおこなうことで、作業の自動化が可能です。作業の自動化により今の従業員で業務を遂行できるようになれば、採用コストを削減できます。
新たに人材を採用すれば、教育コストもかかるでしょう。AIが対応すれば、教育コストの削減にもつながります。
さらに、業務効率化により残業や休日出勤が減れば、残業代や休日出勤手当を削減できるのもメリットです。
労働時間が短縮されることで、従業員満足度が向上すれば、離職率の低下にもつながるでしょう。
人的ミスや事故の減少
AIは、人的ミスや事故の減少につながるのもメリットです。
たとえば、長時間労働を余儀なくされた場合、集中力の低下により人的ミスが起きやすくなります。
すぐミスに気づき修正できる範囲なら、特に問題はありません。しかし、人命を脅かしたり、顧客の信頼を失ったりするミスがあれば、企業の信頼を損なう恐れがあります。
一度失った信頼を取り戻すのは非常に困難です。
そこでAIを搭載したシステムやツールを導入すれば、人的ミスや事故につながるリスクを未然に防げます。
長時間労働を余儀なくされた場合でも、従業員の負担を大幅に軽減できるでしょう。
高精度なデータ分析や予測をできる
データ分析や予測は、AIの得意分野です。
データ分析精度を高めるには、多くの情報が必要です。さらに収集した情報を整理して、分析と予測までおこなうには時間と手間もかかります。
情報収集やデータ分析にリソースを消費すれば、本業に支障をきたしかねません。
AIを活用すれば、情報収集から分析・予測まで自動化できます。さらにAIの機械学習機能は、学習を重ねるほど精度が高くなるのも特徴です。
データを活用すれば、マーケティング精度の向上にもつながるでしょう。
遠隔でのコミュニケーションが可能
AI技術の進化により、遠隔でのコミュニケーションが飛躍的に向上しています。
例として、チャットボットやオンライン会議アプリなどで搭載されているAIを活用した「自動翻訳機能」の精度は日々向上しており、異なる言語間の壁を低くし迅速かつ正確なコミュニケーションが可能です。
さらに、遠隔医療やオンライン教育の場面では物理的な距離を超えて高品質なサービスを提供できることにもなるため、地域格差の解消にも貢献することが期待できます。
上記の通り、これからもAI技術の進化に伴い、さらに多くの応用が期待できるでしょう。
ビッグデータの活用で顧客満足度向上
顧客満足度を向上させるには、顧客ニーズを正確に把握する必要があります。
顧客ニーズを正確に把握するには、ビッグデータの分析が欠かせません。
しかし、ビッグデータから必要な情報を抽出したり、カテゴライズしたりするには時間と手間がかかるのが懸念点です。
そこでAIを活用すれば、ビッグデータを最大限に活用できます。
日々変化していく消費者行動や業界のトレンドなども、AIなら迅速な対応が可能です。
ただし、ビッグデータを扱うには、AIに関する知識や運用経験を持つ人材の確保が欠かせません。
人間しかできない作業に専念できる
どんなにAIが優秀でも、人間にしかできない作業には対応できません。
コールセンターで利用される、AI搭載の自動応答システムを例に見ていきましょう。
顧客からの問い合わせにシステムが自動で回答するため、オペレーターの負担を軽減できます。顧客の待ち時間が減り、疑問が解決すれば顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
システムで解決しない場合は、オペレーターに接続する選択肢も用意されています。必要に応じて自動でオペレーターに接続するので、それ以外の時間はほかの業務に注力できます。
AIと人間にしかできない作業を振り分ければ、業務効率化を図れるでしょう。
AIを導入するデメリット・活用の注意点
AIには、多くのメリットがある反面デメリットも存在するため、導入を検討する際はデメリットを踏まえたうえで検討してください。
AIの導入で注意したいデメリットは以下の通りです。
- 情報漏洩の危険性
- 責任の所在問題
- リスクマネジメントが難しい
- 思考プロセスが不明瞭
- 導入コストが膨大
なお、AIを活用したいなら、AIに関するリテラシーを高めることも大切です。
JDLA(一般社団法人日本ディープラーニング協会)の「G検定」は、AI活用に向けたリテラシーを理解できます。
生成AIの活用にも役立つので、ビジネスチャンスを広げたい方はぜひチェックしてみてください。
情報漏洩の危険性
AIの活用にはネットワークを利用するため、情報漏洩のリスクに備える必要があります。
AIを活用する際には、社内におけるセキュリティ対策の強化を図る必要があります。従業員へのセキュリティ教育も徹底しましょう。
ネットワークを利用する以上、ハッキングやサイバー攻撃といった外部からのリスクにも注意しなければなりません。
AI技術はビジネスチャンスを広げる一方で、ハッキングやサイバー攻撃にも悪用されやすい傾向があります。
AIを悪用した外部リスクには、AIで対抗するしかありません。中には、AIを狙ったサイバー攻撃もあるため、AIに精通した人材の確保も必要です。
責任の所在問題
現状、AIに関する法律が定義されていないため、責任の所在問題も考える必要があります。
原則としてAIシステムの開発者に責任があるとされていますが、利用者の責任が問われる可能性も否定できません。
企業がAIを利用したシステムやサービスを提供する場合は、責任の所在が明確であるかを確認してください。
また、AIによるトラブルが生じた場合、企業がどこまで責任を負うのかも確認しましょう。
リスクマネジメントが難しい
AIは、リスクマネジメントが困難なのも懸念点です。
AIを搭載したシステムに不具合が生じたとき、すべてのシステムが使用できなくなる恐れがあります。
システムの不具合により、完全に業務がストップしてしまうこともあるでしょう。復旧までに時間がかかれば、納期に間に合わない恐れがあります。
納期遅れが生じれば、顧客からの信頼を失いかねません。
こうした事態を防ぐには、AIに不具合が生じた場合はどこまで影響が及ぶのか、問題解決に向けてどのような対策が必要なのかを把握しておくことが重要です。
社内で対応できない場合は、提供元のサポート内容も確認した上での対策の検討をオススメします。
思考プロセスが不明瞭
AIは思考プロセスが不明瞭です。
人が考えたアイデアなら、思考プロセスも把握できます。しかし、AIにより導き出された結果の思考プロセスを、人間の手で把握することはほぼ不可能です。
たとえば重要な意思決定を求められたとき、AIによる結果では正確性が疑われる場合があります。プロセスが明確でない以上、意思決定の根拠にはならないでしょう。
仮にAIが導き出した結果に致命的なミスがあったにもかかわらず、見逃していれば大きなトラブルに発展しかねません。
意思決定のような重要な場面では、AI任せにせず適材適所の人材配置を意識することも大切です。
導入コストが膨大
AIの導入にあたって、コストが自社予算にマッチしているかも重要です。
AIシステムは、高精度になるほど導入コストがかさむ傾向があり、導入後はAIに学習させる運用コストもかかります。
AIの精度が高ければ運用コストをおさえられるでしょう。しかし、導入コストが自社予算を遥かに超えていれば、継続的な運用が困難になる恐れがあります。
運用コストもシステムやサービスによって異なるので注意が必要です。
コストは、導入と運用の両方で検討しましょう。
AIのメリットがわかる事例3選
ここまでAIのメリットやデメリットを紹介してきましたが、実際に導入するにあたってイメージしづらい方もいるでしょう。
そこでAIの導入でどのようなメリットが得られるのかがわかる事例を紹介します。
一般家庭で活用できる身近な事例から、農業や医療まで3つの事例を取り上げますので参考にしてください。
- 国立国会図書館:「NDLOCR」
- ロボット×ドローン×ディープラーニング:AI送電線点検システム
- 自動点字翻訳システム:「:::doc(てんどっく)」
国立国会図書館:「NDLOCR」
NDLOCRは、元々国立国会図書館において、デジタル化されたデータをテキスト化する目的で開発されたOCRプログラムです。
注目すべきは、明治期〜昭和初期までの複雑な資料のテキスト化への対応が可能になったところです。
既存のOCRサービスでは、旧字、旧仮名遣いや異体字といった近代書籍に利用されている文字種や特殊なレイアウトには対応できないという課題がありました。
しかし、NDLOCRでは、市販のOCRより高い90%以上の精度で近代書籍の文字やレイアウトを認識可能になり、古い書籍を調査する際に苦労されていた研究者の方の労力を大幅に削減することに成功しています。
さらに、画像データから、本文のテキストデータ作成にも対応しており、「国立国会図書館デジタルコレクション」でのデータ活用も実現しています。
貴重な資料をテキスト化し、情報として発信したり展示したりできるのは、非常に大きなメリットといえるでしょう。
NDLOCRについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ロボット×ドローン×ディープラーニング:AI送電線点検システム
香川県にある株式会社三豊AI開発は、2020年8月にロボットとディープラーニングによる画像解析システムを組み合わせた送電線点検システムを発表しています。
ロボットには撮影機能の他、送電線上を走れる機能も搭載されているため、走行しながら送電線の損傷を検出・撮影することが可能になりました。
さらに、GPSの位置情報に接続し、ディープラーニングによる解析機能も搭載されています。
異常を検知すると自動で報告書にまとめる機能や、人が確認しやすいように専用ビューアーなどもあります。
ロボット×ドローン×ディープラーニングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「ロボット×ドローン×ディープラーニング」で 日本の送電線点検における問題解決へ。高専発企業「三豊AI開発」の挑戦。
自動点字翻訳システム:「:::doc(てんどっく)」
:::doc(てんどっく)は、TAKAO AI 株式会社が開発した自動点字翻訳システムです。
印刷物を読めない視覚障害者のために開発されました。
印刷物を点字に翻訳する場合、1~2週間の時間を要するほか、1枚あたり数千円のコストが掛かります。
:::docを活用すれば、数分で自動点訳が可能です。操作が簡単であり、スキャナーで読み取ったデータを自動で点字に変換する機能も搭載されています。
パソコンで作成したテキスト・手書きの文字・チラシ・カレンダーなど幅広く対応できるのも魅力といえます。
:::docについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
情報格差をなくし、社会を変える! 自動点字翻訳システムがもたらした可能性
AIリテラシーを身につけるなら「G検定」がオススメ
ここまでAIのメリットやデメリットについて解説しました。
AIを最大限に活用するには、AIリテラシーを身につけていることが前提となります。
AIリテラシーが身についていれば、AIのデメリットに対するリスクマネジメントにも役立つでしょう。
AIリテラシーを身につけたいなら、G検定をオススメします。
G検定は、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する検定試験です。G検定に合格すれば、AIに関する基礎知識を持つ人材だと客観的に証明できます。
ビジネスキャリアの可能性を広げたい方は、ぜひチェックしてみてください。
ディープラーニングの基礎知識と
事業活用能力を検定する資格試験
まとめ
AI技術は日常生活からビジネスまで、幅広い領域で活用されています。
特にビジネスでは、近年デジタル技術を活用するDX化が推奨されており、AIはDXの実現にも欠かせない技術といっても過言ではありません。
AIの導入により業務効率化や生産性の向上など、DX推進におけるメリットも多くあります。
また、AIにはデメリットも存在するため、AIリテラシーを身に着けておくのも重要です。
本記事で紹介した情報を参考にしながら、AIのメリットを最大限に活用して、企業の成長や売り上げ拡大につなげてください。