CVPR 2024 現地レポート【DAY4】

CVPR (Conference on Computer Vision and Pattern Recognition)は、コンピュータビジョン、人工知能、機械学習、および関連分野の研究開発におけるトップカンファレンスの一つであり、業界最先端の研究成果がここで発表される。今年は 6 月 17 日から 21 日までの 5 日間、アメリカワシントン州シアトルのコンベンション・センターで開催された。本稿は、現地参加したリサーチャー2名(株式会社モルフォ)による現地レポート。興味深かったセッションの紹介を交えつつ、学会の様子を時系列で報告するDAY4となる。

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6月20日(木)

昨日と同様のスケジュールだが、この日は夕方にレセプションがあった。実は昨晩もソーシャルネットワーキングイベントが開かれ、二人で事前に申し込んで参加していた。このように研究者同士でざっくばらんに語り合い、それぞれの分野の内容や働き方、学び方を共有する機会も、学会に現地参加する醍醐味だ。

学会が用意してくれる朝食

オーラルセッション会場

基調講演

David Baker 氏(ハワードヒューズ医学研究所・ワシントン大学)による、新しい機能性タンパク質の設計についての基調講演。一見画像処理とは関係ないように思えるが、タンパク質の機能には分子の立体構造が深く関係しており、立体構造モデルの生成といえば本学会でのホットトピックのひとつだ。タンパク質のアミノ酸配列から立体構造を予測する RosettaFold と、それを配列・構造生成に利用した拡散モデル RFdiffusion が紹介された。Baker 氏のチームは様々な標的の構造をガイドに拡散モデルを推論させる手法で多くの成功を収めており、製薬やワクチン開発への応用の可能性が広がっている。また、DNA 配列解析ですでに実用化されている nanopore タンパクの人工設計や、カーボンナノチューブの補強タンパクなど、汎用的なナノテクノロジーとしてのタンパク質設計が紹介された。将来的には複雑な酵素活性を持つタンパク質を設計するために構造のダイナミクスのモデルが不可欠だが、観測が難しいためデータが少ないという課題がある。ダイナミクスのモデリングは、本学会でも注目度が高かった 4D 生成に通じる話だ。今後も画像処理分野の発展が生命科学・工学に与える影響は大きそうだ。

デモ展示

ポスター会場の横に企業ブースとデモ展示ブースが存在する。デモ展示では生成モデル、SLAM、新タイプのカメラセンサ等をその場で体験できる。加えて企業ブースでは GAFAM やスマホ企業、自動運転にロボット系企業、さらには有名な科学系の出版社いくつかが出展していた。特に MIT Press のブースでは機械学習本の有名な著者である Phillip Isola 氏がサイン会をしているのを目撃した。シアトル現地で働く日本人数名にも遭遇した。

サイン会の様子

SNS でも話題になった二足歩行ロボット

(角田良太朗、三宅博史)

JDLAでは、2024年7月18日(木)16:00よりオンライン開催のCVPR2024 技術報告会を予定しています。イベントページはこちら