データ活用による新しい価値創出の可能性を。

「CDLEハッカソン x TMIP」CDLEハッカソン2021テーマスポンサーインタビュー

「都市課題の解決」をテーマにハッカソン開催! データ活用の提案だけでなく企業とAI人材とがつながる場にも

日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催する「CDLEハッカソン2021」が、2021年10月〜12月にわたって開催された。「CDLEハッカソン」とはG検定/E資格保有者のみが参加できるイベントで、合格者のさらなるスキルアップやスキルの実践の場、合格者同士または合格者と企業・研究機関との交流の場として提供しているものだ。今回の「CDLEハッカソン2021」でテーマスポンサーを務めたのは、大手町・丸の内・有楽町の大丸有エリアのイノベーション・エコシステム形成を目指すTMIP。「CDLEハッカソン」に参画した背景やその意義について、TMIP事務局の小野田健太氏(三菱地所株式会社)と山崎浩平氏(三菱地所株式会社)に聞いた。

「CDLEハッカソン2021」の様子はこちら

都市DXプロジェクトを“新たな角度から盛り上げたい”と期待を込めて参画

さまざまな業界で自動化・AI化が推し進められているが、「社内の事業データをどう活用していいかわからない」という悩みを持つ企業は多い。「CDLEハッカソン」では、企業が事業運営によって得たデータをG検定/E資格保有者が活用することで、提案のみならずAI開発や課題解決まで導いていることが特徴だ。さらには、研究員や大学教授が技術審査を行い、新規事業創出にもつなげている。

2021年で3年連続3回目の開催となった「CDLEハッカソン2021」。今回のテーマスポンサーを務めたTMIP(Tokyo Marunouchi Innovation Platform)は、大手町・丸の内・有楽町の大丸有エリアを舞台に、大企業とスタートアップ・官・学が連携して社会課題を解決することで、グローバルなマーケットに向けたオープンイノベーションの創出を支援している団体だ。大企業を中心とした約70社の会員企業と、産・学・官・街づくり団体などのパートナー、そしてその2つをつなぐ事務局によって構成される。

TMIPでは、テーマ別の課題解決を議論する「イノベーションサークル」や、街を使ったニーズ検証・実証実験支援を行う「アーバンラボ」、規制緩和に向けた検討会や政策提言などの活動によりイノベーション創発を促進する「アドボカシー」など、骨太なプロジェクトを生み出していく機能を備えている。「丸の内発のイノベーションが世界を変える」をコンセプトに、これまでに電動キックボードの行動走行など、多くの実証実験などに取り組んできた。

TMIPが「CDLEハッカソン2021」に参画したのは、ニューノーマルに対応した都市DXサービス開発を目指すコンソーシアムとして2021年1月に発足した「丸の内CityDXパートナーズ」の活動の一貫だった。参画企業の9社とともに、来街者のリアル行動データ解析や、丸の内をバーチャル上に再現した配信プラットフォーム「バーチャル丸の内」の構築といったプロジェクトに取り組んでいる。

小野田氏は「『丸の内CityDXパートナーズ』では、都市のデジタル化を推進し、街に資するイノベーションの創出に向けて活動しています。この活動を新たな角度から盛り上げるため、『CDLEハッカソン2021』にテーマスポンサーとして参画しました。また、データの利活用に取り組みたいと考えているTMIPの会員企業と一緒に取り組むことで、課題解決の一助になればと考えました」と語る。

「街づくり」というテーマに即したアイデアが続々

2021年のテーマは「都市課題をデジタル・データを活用して解決するサービス・ソリューションの開発」。本年度は、多くのエントリー希望者の中からJDLA正会員メンターにより選出されたCDLE会員30人が参加。5人一組の計6チーム対抗で、リアルイベントとしてハッカソンを開催した。

CDLEハッカソン2021の様子

参加者は、TMIP会員企業である三菱地所とデンソーからそれぞれ提供された「丸の内カード」の購買データ(丸の内にあるビル群での購買履歴情報)と、「yuriCargo」のユーザーデータ(車の運転における加速度などのセンシングデータ)の2種類を活用し、都市課題を解決するサービス・ソリューションの開発に挑戦。約1カ月半かけて新サービスの提案やデータ解析モデルの構築、アプリケーションの開発などに取り組んだ。

2021年12月4日に行われた最終審査会では、6チームがそれぞれアイデアを発表。5人の審査員が「産業・社会的なインパクト、独自性、技術力」の3つの観点から審査した。最優秀賞を受賞したのは、ゲームに近い感覚で、ユーザーが主体的に街の課題解決や魅力の再発見ができるアプリ「丸の内クエスト(マルクエ)」を発表したチームだ。その他にも、店舗ごとに最適な営業時間をレコメンドするLINE botや車椅子の利用者向けに通りやすい道や人の接近を自動で通知するサービス、購買データをもとにビジネスパーソンのマッチング・協働機会の創出を促すサービスなど、多様な切り口かつユニークなソリューションが提案された。

小野田氏は「多くの参加チームが実際に丸の内エリアを歩いて情報収集を行うなど、ハッカソンへの熱意の強さがうかがえました。また、発表されたアイデアについても『短期間でここまで形になるのか』と期待以上の完成度でした。提供したデータの特性上、購買体験に直結するようなサービスやソリューションが多く占めるのではと思っていましたが、街づくりや魅力向上に関するものが多かった点にも満足しています」と振り返る。

AI人材と出会い採用にもつながる場に 

テーマスポンサーとして参加したメリットについて、山崎氏は「社内に貴重なデータがあったとしても、それをどのように解析して使ったらいいのかがわからなかったり、社外のデータと組み合わせての活用に踏み切れなかったりする企業は多いと思います。TMIP会員企業でもそのような課題を感じている企業は多く、参加した意義があったと感じています。また、AIやディープラーニングの専門人材が不足している企業にとっては、『CDLEハッカソン』はAI人材と出会い採用につなげることができる機会にもなり得ると思います」と語る。

最後に小野田氏は「TMIP事務局内でも、ハッカソン終了後には『こういうデータも使えるかもしれないな』という話が出るようになりました。今後またご一緒する機会があれば、さらに多くのTMIP会員企業・団体を巻き込み、バージョンアップした形で参画できればと思っています。」と語った。